本屋で目当ての本がなく、そのまま帰ろうかな〜と思っていたところ、「そういえば、星野源のよみがえる変態が読みたいんだった」とタイミングよく思い出し、文庫本のコーナーに近づいた。売れている本らしく、目立つ位置に並べられていたので、苦労することなくさっさと買うことができた。
よみがえる変態は文庫化される前からずっと読みたかった本で、ネットでレビューを見ていると「9割が下ネタで1割が闘病記でした」とか散々な前評判が書かれていたので、きっとえげつない量の下ネタが散りばめられているのだろう、と覚悟して読んだ。確かに息を吐くように下ネタが出てくるものの、文体のせいなのか、それともそういう本だと分かって読んでいたからか、さほど気にせずに読めた。連載をまとめた本なので、空いた時間になんとなく読もうかな、という感じで読みやすい。
自分がずっと気になっていたのは闘病記の部分で、散々持病の症状で苦しんで病んでいた時に「地獄でなぜ悪い」を聴いて「そうだ、この世は地獄だと思って生きることにしよう」と吹っ切れてからというもの、この曲が作られた背景を知りたかったので、その部分が詳細に描かれていたのが良かった。なんとなく歌詞から予想はできたものの、なるほどそういう経緯で作られた曲なのかと知ることができ、最初に見た時は呆気に取られてしまったアニメMVも、より深みを増して見えた。
闘病中のエピソードから、それまでの淡々とした文体がらガラッと何かが変わる様子が書き残されており、文字通り命がけだったのだと思う。その代償と引き換えに別の視点を得たというか、苦しいことも辛いことも全部含めてクリエイティブに昇華したい、という気持ちが強くなっているのが伺えた。今はまたそこから一歩先に進まれているように見えるのだけれど、恐らくこの体験が星野さんの人生にとってのターニングポイントだったのだろうな、と思う。自分も同じ気持ちを持っているので、その部分には深く共感した。自分の体に突然起こったアクシデントを受け止めるのは思った以上に大変だ。
この本の困るところは、笑いが止まらなくなってしまう部分が多々あり、安易に人前で読めないところである。クスクス程度ではなくて声を出して笑いたくなる箇所が多いので、堪えるのが大変。自宅でくつろいでいる時に読んでアッハッハと笑うのをオススメしたい。オススメの本です。
BGMには「地獄でなぜ悪い」をどうぞ。