今年の夏は特に夏らしいこともしていなくて、なんとなくこのままズルズルと夏が終わっていきそうでなんだかな〜と思いながら日々を過ごしていたら、地元で「風鈴祭り」が開催されているという話を聞いた。
風鈴祭りというと、テレビのニュースなんかでよく見る壮観な光景をイメージしていて、夏らしい気分が味わいたかったこともあり、家族に頼んで連れて行ってもらうことになった。
市街地から車を走らせ、立て看板の案内に従うままに進んでいくと、住宅街から少し離れた山奥にお寺があることが分かり、そこに至るまでの道が千と千尋の神隠しの序盤に出てくるシーンさながらの獣道だった。
直前まで通り雨が降っており、大変蒸し暑い日だったこともあって、もしタイミングが良かったら見れるといいな〜くらいの気持ちだったのだけど、そのまままっすぐに道を進んでいくと何やら緑に囲まれた神秘的な空間が見えてきて、思わず車を止めてもらった。
雨は上がっているのに水の音がするので上を見上げると、雨に濡れた木から雫が霧雨のように滴り落ちていた。森の中に水の音だけが響いていて、神々しい雰囲気を醸し出していた。
雲が切れた瞬間に眩しい太陽光が照りつけ始めて、緑がよりいっそうキラキラと輝き出し、なんとも圧巻だった。なんだか良いタイミングで来てしまったな、と思いながら写真を撮った。水溜まりが蒸発していく光景が幻想的ですらあり、不思議な空間に迷い込んだような気分になった。
お寺の本堂に着くと、遠目から風鈴が並ぶ光景が見えた。拝観料を払って中に入る。さっきまで雨が降っていたのと、平日なこともあってか人は3〜4人ほどで、じっくりと風鈴を見ることができた。
様々な柄の風鈴が雨上がりの空と緑に映えて、なんとも見ていて気持ちよかった。
雨上がりということで湿気はあったけど、同時に清々しい空気も漂っていて、そこにいるだけで心が浄化されていくような気持ちになった。山奥にあるからか、一切邪魔な音がしない静寂な雰囲気も手伝って居心地が良かった。縁側でのんびり見ている人もいて、邪念や雑念が消えていくような感覚になった。
思い返せば、こういういかにも夏っぽいことは今までしたことがなかった。これを機会に、これからはもうちょっと季節を味わうことを意識してもいいな、と思う。夏が終われば秋なので、紅葉とかも見に行きたいけど、まずはもうちょっとギリギリまで夏を楽しんでもいいかもしれない。出来れば、また来年の夏も風鈴祭りを見に行きたい。