物心ついた頃からずっと田舎に住んでいて、今のところ生まれてから現在まで、一度も故郷を離れたことがない。故郷を離れるかもしれないという機会は2年前に訪れそうになっていたのだけれど、タイミングが良いのか悪いのか、結局その機会は無くなってしまった。理由は持病の発病をきっかけに、実家に留まらざるを得なくなったからである。
こういう言い方をすると、故郷から逃げたかったけど逃げられなかった人、みたいに捉えられるかもしれないけど、そういうわけではなくて、むしろ地元は好きだし、離れたいと思ったことはない。ほとんどの人は進学や就職をきっかけに出て行ってしまうので、こういうケースは珍しいのかもしれない。バイトを始めた事をきっかけに、京都に住みたいと思っていたのだけれど、それは自分の地元から逃げたいとか、そういう気持ちではなくて、そろそろ独り立ちをしたほうがいいかな、という気持ちからだった。京都から地元を往復する日々で、地元に帰ってくると「やっぱりここの方が自分の性に合っているかもしれない」と感じたことも何度かあった。
最近は、過疎化の解消のための移住促進の活動なんかも活発になっていて、都会から田舎に移住してくる人も珍しくなくなったけれど、自分のようにずっと田舎に住んでいるという人は、若い人だとあまり居ないらしい。ずっと気づいていなかったのだけれど、「田舎にずっと住んでいる」ということ自体が、もしかして珍しいことなのかもしれない、と思い始めた。意識して住んでいるわけではないので、尚更なのかもしれない。最初は、田舎でしか順応できない人間なのかもしれない、とネガティブに捉えていたけど、最近は無理して都会に順応することはないのではないか、と思えてきて、田舎で順応できているのならそれでいいや、という考え方に変わってきた。都会で一生懸命働いている人からしたら、逃げている、と思われるかもしれない。けれど、それが自分の生き方なんだと思えるようになってきたから、自分の中で少しずつ何かが変化してきているのかもしれない。ずっと、「普通の人」や「凄い人」に憧れていたけど、最近はそれを少しずつ諦めつつあって、代わりに自分に出来ることを探し始めた。「出来て当たり前」という言葉にも、あまり縛られなくなった気がする。
若い世代の人が、田舎でずっと住み続けること自体が、珍しくない世の中になってもいいのではないか。なってほしいなあ、と思う。